何の話?
テレワークや在宅勤務の際に、労働者が負担する費用(通信料、電気料金等)が、「在宅勤務手当」として支給されるときがある。
それらのうち、実費弁償分として【割増賃金の算定基礎から除外】することができる場合の考え方。
簡単にまとめると!
在宅勤務手当のうち、【割増賃金の算定基礎から除外】することができるものは………合理的・客観的に計算された実費を弁償するもの等が該当する。
具体的にまとめると!!
在宅勤務手当については………
①一般的には労働基準法第11条に規定する賃金に該当する場合には、割増賃金の基礎となる賃金に算入される。
②事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給される場合には、労働基準法第11条に規定する賃金には該当せず、割増賃金の基礎となる賃金への算入は要しない。
必要な実費を弁償するものとは………
労働者が実際に負担した費用のうち、業務のために使用した金額を特定し、当該金額を精算するものであることが外形上明らかであるもの。
具体的には………
①就業規則等で実費弁償分の計算方法を明示し
かつ、
②在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法
であることが必要。
在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法とは………
例えば、次の①~③の方法が考えられる。
① 国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」で示されている計算方法
通信費に係る業務使用部分の計算方法
業務のために使用した基本使用料等=従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×(その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数)×1/2
例えば………
従業員が9月に在宅勤務を20日間行い、1か月に基本使用料や通信料1万円を負担した場合の業務のために使用し部分の計算方法。
10,000円×(20日[在宅勤務数]/30日[9月の日数])×1/2=3,334円(1円未満切上げ)
電気料金に係る業務使用部分の計算方法
業務のために使用した基本料金や電気使用料=従業員が負担した1か月の基本料金や電気使用料×(業務のために使用した部屋の床面積/自宅の床面積)×(その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数)×1/2
② ①の一部を簡略化した計算方法
通信費及び電気料金については、直近の過去複数月(3か月程度)を用いて、①の例により計算する方法で一定期間(最大1年程度)継続して支給する方法。
③ 実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法
・実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定めた上で、当該単価に在宅勤務をした日数を乗じた額を在宅勤務手当として支給する。
・具体的には………
(a) 当該企業の一定数の労働者について、①の例により、1か月当たりの「業務のために使用した」金額等を計算する。
(b) 当該労働者について、(a)÷(1か月間に在宅勤務をした日数)をし、1日当たりの単価を計算する。
(c) 一定数の労働者についてそれぞれ得られた(b)の単価のうち、最も額が低いものを、1日当たりの単価として定める。
参考条文等
労働基準法
11条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
37条5項
………割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
労働基準法施行規則
21条
………家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、………割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
①別居手当
②子女教育手当
③住宅手当
④臨時に支払われた賃金
⑤一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
出典元
・「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240409K0010.pdf)を加工して作成
・「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(国税庁)
(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf)を加工して作成